yururi-furu’s blog

ゆるりと続けるフルコミ営業

灯りをどうぞって、誰?(湘南台の首つりの家③/⑪(不動産百話①))

 

それらを報告書にまとめてから、建物の

中を確認したかったですが、鍵が無い。

 

弁護士さんに、鍵が無く建物に入れない

ことを連絡します。

3日後の14時に、弁護士さんが鍵屋さ

んを連れて来るとのこと。

 

3日後に再度現地に来ることにして、そ

の日は引き上げることにしました。

 

そして3日後の14時、K弁護士さんと

弁護士になったばかりの20歳代の女性

が来ました。

K弁護士さんは、K大学で「法律学」の非

常勤講師もされています。

40歳代後半のベテランで、新人弁護士

さんの実地研修を行うことも多い。

毎年誰かしらの研修を行っています。

そのため春先には、必ず新人弁護士さん

と一緒に行動しています。

 

少し遅れて鍵屋さんが来ました。

 

鍵屋さんが建物全体を見たところ、裏の

勝手口の方が安く済むとのこと。

早速、勝手口の鍵を外し、新しいものに

交換します。

その時間は数分。

5分もかかりませんでした。

 

建物の中を確認するために、4人で中に

入ります。

後で考えてみて謎だったのが、鍵屋さん

も一緒に建物の中に入ってきたこと。

普通鍵屋さんは、自分の仕事が終わった

らその場でお金をもらって業務終了、帰

ります。

 

勝手口ということは、台所の横にあるこ

とが多い。

少しだけ雨戸がずれていたので、その明

かりを頼りに建物の中に4人で入って行

きます。

 

しかし、リビングらしきところは真っ暗

で何も見えません。

その先にあるらしい部屋の雨戸がピッチ

リ閉まっている。

そのために昼間なのに、本当に真っ暗で

何も分からない。

 

K弁護士さんが

「センバさん、懐中電灯とか持ってきて

いないの?」と聞いてきます。

 

「申し訳ない、持ってきてないです。本

当に何も見えないですね」と僕。

 

その瞬間でした。

・・・・・・・・・コトン。

何かが落ちた音がしました。

 

多分全員が気づいたはずです。

でも何かが落ちただけなので、ちょっと

驚いたぐらいでした。

 

しかしその何かが落ちた方角から、何か

が転がってくる音がする。

 

コロコロコロコロ・・・・・。

コトン。

コロコロコロコロ・・・・・。

何かに当たって、でもそれを乗り越えて

転がって、間違いなく近づいてくる。

 

そしてK弁護士さんが「痛てっ!」。

 

その瞬間、灯りが点きました。

転がってきた懐中電灯の灯りです。

・・・・・・・おそらく隣の部屋から。

 

何故か「灯りが無い」と言った瞬間に、

隣の部屋から転がってきた懐中電灯。

そしてK弁護士さんの足に当たって、スイ

ッチが入った。

 

誰だ、この親切君は。

偶然じゃないだろう、これは。

 

こんな時は誰も声を出さないもんです。

 

 

K弁護士さんが「取り合えず一回みんな外

に出てみようか」と言うまでは。