yururi-furu’s blog

ゆるりと続けるフルコミ営業

私たちは桜です・・・(私たちは桜です①/④(不動産百話③))

 

これも、僕らの親会社の信託銀行から来

た案件です。20年ほど前。

あるメーカーの役員さんが、自宅の買い

替えを考えてるから訪問してください、

という依頼。

買いたい不動産が決まっているので、早

めにとのこと。

早速アポイントを取って、週末に往訪す

ることになりました。

 

場所は横浜市中区本牧

三溪園近くにある、建築後5年ほど経っ

た7階建てのマンションです。

財閥系不動産デベロッパーが分譲した上

級クラスのマンション。当時はまだそん

なに普及していない二重オートロック。

明るめの色のレンガタイルが建物全体

に貼られていて、いかにも高級そう。

 

(住んでいる人の収入が高そう)

(面倒なお客さんじゃないといいな)

(買い替え物件の希望はどこだろう)

 

そんなことを考えながら、オートロック

扉の横にあるオートロックシステムのイ

ンターホンで、部屋番号を入力します。

部屋は2階なんですが、今回はこれがキ

ーポイントでした。

 

201号室。

エレベーターを降りると、ポーチと玄関

が開いていて奥さんが待っていました。

年齢は50歳代なかばぐらい。にこやか

に出迎えてくれました。

 

でも玄関を入ると、若干の違和感。

なんか白い。

すごくきれいにしてあるのですが、玄関

のタイルから廊下まで白い。

 

玄関のタイルは普通、汚れが目立たない

ようにグレーや薄い茶色系が多い。

真っ白な玄関タイルは初めて見ました。

 

そして廊下。

フローリングも普通、明るいメープルや

落ち着いたウォールナットなんかを選ぶ

人がほとんどだと思うんですが、白い。

木目がうっすらと分かるけれど、ほとん

ど真っ白。

壁のクロスも天井のクロスも白。

 

通されたルビングにご主人がいました。

当然、リビングも同じく真っ白。

テーブルとイス、ソファーも白。なぜか

ある飾りの暖炉も白。

そして夫婦二人の服も白。

また、生活を感じさせるものが何も置い

ていない。

 

(なにかの信仰だろうか)

(夢ではないよね)

(顔も白かったら馬鹿殿だよな)

 

そのとき奥さんが小さな声で、

「私たちは桜みたいなものなんですよ」

 

 

えっ、いま何か変なこと言わなかった?