この計画は、意外と早く進みました。
それから5ヶ月後、その社長が病気で入
院して、実際の経営に関与できなくなっ
たからです。
副社長に経営全般を任せざるを得ない。
古参の社員もいたのですが、銀行側が
根回しのやり方を指導しておいたため、
副社長の計画に反対はほとんどありませ
んでした。
銀行の融資は、新規のものではなく追加
融資でしたが、浜松町駅徒歩4分の小さ
な本社ビルだけではなく、近くにある土
地100坪の空き倉庫も担保に加えて、
根抵当権の枠を広げて融資します。
それから8ヶ月後に社長が亡くなりまし
た。でも事業に影響はありません。既に
実際の経営は副社長に委ねられていたか
らです。
本社ビルや空き倉庫は会社名義なので、
相続の対象にはならない。しかし、千葉
県の松戸駅近くに社長の個人名義の土地
300坪近くがありました。これは個人
名義なので相続の対象です。
会社はそんなに余裕がある訳ではなく、
タイとベトナムに事業進出したばかり。
個人の相続の基礎控除額はこのときで、
5,000万円。プラス1人×1,000万
円です。今回は合計、7,000万円。
(いまは基礎控除3,000万円。プラス
1人×600万円(2021.11.30現在))
都内に個人名義の自宅もあったので、億
単位の相続税がかかってしまい、手持ち
の現金では払うことができない。松戸の
土地を売却することになりました。
ただ、社長はここ数年体調が悪かったた
め、相続対策でこの土地を会社名義に変
更しようと思っていて、銀行に相談をし
ていました。
本当なら銀行は、早く対応したほうがい
いんですが、銀行にとってすぐメリット
のないものには、具体的なアドバイスを
せず、そのまま棚上げしていた。だから
相続の対象になって税金がかかってしま
った。
そのあたりを薄々知っていた娘さんは、
銀行の担当者に少し強い態度で話にきま
したが、銀行側は「税理士に相談するよ
うに説明している。それをしなかったの
は自己責任です」と応対。
ここでのポイントは、確かに税理士の話
はしていますが、社長への説明が軽く、
本当に相談に行ったほうがいいような言
い方をしていなかったことです。
銀行の担当者は、確かに税理士の話を振
ってました。しかしこれもテクニック。
軽く話してアリバイをつくり、その裏で
は信託銀行の担当者や僕に、
「近々相続がらみの事案で松戸のマンシ
ョン用地が出そうだから、購入先を探し
ておいてほしい」と指示が出てました。