社長は激怒しています。
会社の資金繰りは常に火の車、自転車操
業です。つまりペダルをこぐのを止める
とそこでお終い。
なのに社長の浪費癖は治らない。
毎日いろんな意味でドキドキするような
状態なのに、そこに50万円持ち逃げ。
社長が怒らないはずはありません。
D主任は独身で、携帯電話も無い時代な
ので、まったく連絡がつかない。
当然家を訪ねても不在。打つ手がなく、
警察に相談して被害届けを出しました。
それから1ヶ月ちょっと経ったある日、
D主任が昼過ぎにやってきました。
「よう、みんな元気?」
「ちょっと有給休暇を取ってたからさ、
心配したでしょ」
「でもこのとおり、まったく元気です」
「明日から普通に会社にきま~~す!」
(どういうこと?)
(50万円はどうなった?)
(なぜ平気でここに来る?)
常務が出てきて問い詰めます。
「なぜ何も言わずに勝手に休んだ」
「なぜ連絡がつかなかった」
「お客さんから預かった50万円はどこ
にやった」
「こっちは警察に被害届けを出している
んだぞ!」
「今ここで50万円を返せ!」
D主任は、
「いやいや何をそんなに怒っているんで
すか。あんたおかしいよ」
「有給休暇は社員の権利でしょう」
「それにとやかく言うのは、社員の権利
を侵害している」
「50万円なんて、俺の知らないことの
責任を押し付けるなんて、バカだ!」
「工事の専門家にそんな態度を取ると、
俺はこの会社を辞めるぞ!」
50万円を持ち逃げしたくせに、この開
き直り。話を聞いていると、こっちが悪
いような気さえしてきます。
当然に常務は激怒。
周りの社員も怒っています。
そして常務は、
「みんなでこいつを捕まえろ~~~!」
そこにいた男性社員4人と常務で、D主
任を取り押さえました。床に引き倒して
腹ばいににさせ、上に二人が乗ります。
D主任は、
「お前らこの暴力は許されないぞ」
「ちょっと気軽に有給休暇を取ったら、
この仕打ち。ふざけんな!」
「俺の権利をどう考えているんだ!」
10分もしないで蒲田警察から警察官が
来て、引き渡し。
捕まるときに言った言葉がすべてかも。
「50万円は1ヶ月経ったら時効だろ」
持ち逃げを認めています。
どう考えても、意味が分からない態度。
多分、お金を使い果たして困ってしまっ
たうえで出社。
でも普通は、持ち逃げした会社に出社は
できません。