何を言ってるんだという顔で、僕がその
大会関係者を見ていたのを察したのか、
別の係員が声を掛けてきました。
「いや、この人の言う自転車ってのは、
レース用の自転車。トラックレーサーの
ことだよ」
「ロードレーサーも持っていないの?」
「レースに出たこともないんだよね?」
当時も発売されていたサイクルスポーツ
を毎月買っていたし、ときどきニューサ
イクリングという月刊誌も買っていたの
で、そういう自転車があるのは知ってい
たんですが、興味がなかった。
だから、もちろんレースに出たこともな
く、今日初めてこういった大会に来たこ
とを伝えると驚いたように、
「健脚だねー。たまにツーリング車で大
会に来る人がいるけど、今までで一番速
いよ。」
「惜しいなー、トラックレーサーで走っ
てたら、多分優勝していたなー」
(!、そうなの?そんなに違うの?)
後で考えたら、この時の僕は面倒くさが
って夏の装備のままだった。
ツーリング車ということだけでもハンデ
なのに、ライト、泥除けはもちろん、フ
ロントキャリアとリアキャリアも付けた
まま。
ツーリング車なので、1インチ3/8のWO
タイヤ。割れたトークリップに伸びきっ
たトーストラップ。シューズは学校で履
いている安い運動靴で、当然シュープレ
ートも打ってない。
それにしてはいいタイムだったらしい。
確かに、夏のチャレンジで鍛えられた気
がするし、何よりチャレンジ中は誰にも
追いつかれなかった。
これはツーリングに出てみないと分から
ないんですが、同じ方向にツーリングで
走っているサイクリストがいると、遅い
サイクリストは追いつかれることがあり
ます。
高校1年の青森一周のときは、何度も追
いつかれた。でも昨年の北海道一周のと
きは、15日間で1度しか追いつかれた
ことが無く、逆に何人もに追いついた。
そして今年の青森~大阪のチャレンジで
は、誰にも追いつかれなかった。
つまり確実に体力や脚力が上がってる。
これがきっかけになり、自転車の仕事で
生きていけないかなと考えるようになり
ました。できれば自転車選手として。
大学に進学するつもりだったので、来年
は最後のロングツーリングに出て、その
後は自転車競技だけに専念することに決
めました。