yururi-furu’s blog

ゆるりと続けるフルコミ営業

売却物件の出来上がり(マンション買うつもりないけど④/⑥(不動産百話⑦))

 

マンション引き渡し日の1週間前、ご主

人が管理室にやって来ました。

 

「管理人さん、急で驚くかもしれないけ

れど、来週引っ越すことになりました。

長い間お世話になりました」

 

僕は、

「急に引っ越すなんて驚きました。何か

あったんですか。寂しいですね」

 

ご主人は、

「いろいろとね・・・」

 

すべて知っていると、どこかでわざとら

しさが出そうで怖い。でも演技します。

 

慰謝料や賠償金には、算定の基準があり

ます。

弁護士さんや少額訴訟を扱っている司法

書士さんが参考にする算定書。それと、

こういったケースではどのぐらいの慰謝

料や賠償額になっている判例が多いかを

まとめた本なんか。

グラフになっていて、事件ごとの金額が

書いてあります。そこに今回のケースを

当てはめると、取れる金額がだいたい分

かってきます。

今回大きかったのは、弁護士さんに相談

している途中で判明した、ご主人の浮気

です。それを離婚の原因に持ってくれば

300万円ぐらいの慰謝料が見込める。

そこにモラハラを足していきます。もち

ろんそのケースごとに違ってきますが、

予想がつきやすくなる。

今回の慰謝料請求額は、600万円。そ

して認められたのは、420万円です。

こういった場合は、多めに請求をかける

ので、結果としてはほぼ予想通り。一番

の目的は離婚を認めさせることと、訴訟

に持ち込んで、ご主人を被告とすること

です。被告人にさせて、今までやってき

たことを自覚させる。

勝訴したので、これでひと段落。当然ご

主人は控訴できますが、一審とはいえ判

決が出ると、一般の人はそれを重く受け

止めることも多いんです。

今回は控訴しませんでした。

 

判決も出て、ご主人がマンションから退

去する日も決まりました。

僕としては、ここで終わると思っていま

した。マンションを売却しないだろうと

思っていた。奥さんと娘さんが住むんだ

ろうなと。

 

でも違っていました。住むことは無理だ

ったんです。

二人とも部屋に入れない。過去のことを

思い出して、怖くて部屋に入れないんで

す。ご主人はもういないのに。

 

 

判決で、ご主人はマンションを引き渡し

た。奥さんと娘さんは、トラウマで部屋

に入れない。

家族が誰も住めない部屋になりました。

売却物件の出来上がりです。