yururi-furu’s blog

ゆるりと続けるフルコミ営業

頑張って働くらしい(不審な査定依頼②/②(不動産百話④)

 

泣き出す奥さんと子ども。

怒鳴った男は、更に怒り顔。

心配そうにのぞき込む他の中年男性。

本人確認をする警察官。

うつむいたまま何も言わないお客さん。

 

まったく意味が分からず、立っていまし

た。勉強のためについて来た新卒君も、

唖然としています。

(これは何かの事件なのか?)

(まさかドッキリじゃないよな)

(サプライズなら要らない)

 

数分経って少し落ち着いたのか、さっき

怒鳴った中年男性が話かけてきました。

「急に大きな声を出して申し訳ない」

「私は、新横浜にある小さな工場を経営

する社長です」

「他の男は、うちの社員です」

「実は彼(お客さん)は、仕事でミスを

して、叱責されたらそのまま会社を出て

いってしまった」

「すぐに探したんだけれど見つからず、

警察に捜索願を出してから2週間も経っ

たところであなたから電話があり、彼

(お客さん)と一緒に来るというので待

っていたんだ」

 

僕は「あ~~そうですか」と言うのが、

精一杯。

(なんで失踪して行方不明になっている

くせに、マンション査定依頼の電話をか

けてくる? 意味が分からん)

 

その後社長から、

「不動産屋さん、申し訳ないけど状況が

状況だから、今日はこのまま帰ってくれ

るか」

 

(言われなくても帰るよ)

(何も出来ることがないし、邪魔だろ)

変な雰囲気の中にいてもしょうがないの

で、そのまま帰ることになりました。

新卒君と「なんなんだ」と話ながら。

 

新卒君は、ちょっとショックだったみた

いです。

そりゃそうだ。

こんなの聞いたことがないもの。

 

 

それから10日ほど経ったころ、このお

客さんから電話がありました。

「実は会社を飛び出したあと、家に帰り

づらくなってしまった」

「一度家まで行ったらポストに「求む!

売却不動産」のチラシが入っていた」

「一人では家に帰りにくく、一緒に行っ

てくれる人もいなかったので、センバさ

んに電話して査定のふりをして同行して

もらった。申し訳ない」

「でも反省して、もう一度あの会社で働

くことになりました」

「家も売らなくなりました。ありがとう

ございました」とのこと。

 

 

帰りづらくて電話してきただとーーー。

あのな~~~、いい加減にしろ!!