yururi-furu’s blog

ゆるりと続けるフルコミ営業

僕たちへの手紙でした(湘南台の首つりの家⑤/⑪(不動産百話①))

 

その手紙には、90歳代の母親が亡くな

った事への悲しみが書いてありました。

 

そして続けて、最愛の奥さんが病気で亡

くなったこと。

その悲しみに自分は耐えられない。

ずっと続けてきた趣味の野鳥のカメラ撮

影も、情熱を失いつつあると。

 

家の中には、望遠レンズで撮ったと思わ

れる綺麗な野鳥の写真が、たくさん飾っ

てありました。

 

更に自分にも、おそらく治らないであろ

う病気が見つかったということ。

そして親族とは絶縁しているため、誰も

頼れる人がいないことなんかが書いてあ

りました。

 

「もう生きている意味がない」という絶

望が綴られている手紙。

誰に宛てたか分からない手紙。

でも、最後は「宜しくお願いします」と

いう言葉で終わっている。

 

3人で回し読みして、これは僕たちへの

手紙ではないかと思いました。

最後に資産処分に当たる、その時点では

本人には分からない誰かに向けた、託す

ような手紙です。

 

僕たちにできることは、この不動産を次

の人に引き継ぐこと。

お金に換えて、それを国庫に納めること

がその役目です。

速やかに進めたい。それだけです。

 

特にお金や株券なんかがが無かったため

に、そのことを資産台帳に記入して確認

を終わります。

 

外の駐車場に、トヨタのマークⅡが停め

てあったのですが、車の買取り業者さん

に確認したところ、価値はゼロとの事。

 

弁護士さん達が先に帰り、戸締りや雨戸

・窓を閉めるのは僕の仕事です。

 

さっきの件もあるので、雨戸はほんの少

し開けておいて、中に光が入るようにし

ておきます。

また2階の雨戸は、お隣の家の方に向い

ていないものを開けたままにして、光が

入るようにしておきます。

 

お隣の家の方を向いている雨戸を開けて

おくと苦情が入ることが多いからです。

 

夜なんかにお隣の雨戸が開いていて、ガ

ラス越しに中が見える。

事情を知っているだけに、それは気持ち

のいいもんじゃない。

そのうちに「夜中に誰かいた」なんて変

な噂が立ったりすると、ますます家が売

りにくくなります。

 

手紙のことを思い出すと少し残念な思い

を持ってしまいます。

でも速やかに進めたいという強い気持ち

が沸いてきました。

 

なんとかしてあげたい。

 

 

でも実は、この感情移入なんかは、あま

りよくないことなんです。