yururi-furu’s blog

ゆるりと続けるフルコミ営業

目が見えない、耳が聞こえない(本日妻が亡くなりました㉑)

 

どこの家でもそうなんでしょうが、僕の

家でもきちんと挨拶を交わします。

「おはよう」

「行ってらっしゃい」

「お帰りなさい」

「ありがとう」

「おやすみなさい」

 

これは僕よりも、妻のほうがちゃんとし

ている。常に家族のことを考えているか

ら、自然に出てくる。たぶん両親から受

けついだもの。

妻は入院してからも、ほとんど決まった

時間に、「おはよう」と「おやすみなさ

い」を LINEで送ってきていました。

 

でもそれが、2回目の移植の前あたりか

ら時間がずれたり、送ってこないことが

あるようになりました。

 

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無菌室前のインターホン

 

後で思ったことですが、同じころから話

し方が変わってきていた。

妻の弟さんから授けてもらった末梢血幹

細胞。すごくありがたいことで感謝しか

ありませんが、妻の話し方が少しだけ気

になりました。

「ありがたい。弟には感謝しかない」

「申し訳ない。弟に申し訳ない」

「こんな自分のために細胞提供をしてく

れた。私なんかのために」

こんな言葉を繰り返す。

もちろん気持ちは分かります。だけど何

度も何度も繰り返し、その内に視線を落

として下を向いたまま、どこかうつろな

感じでずっと呟くようになった。

 

そして LINEがあまり返ってこなくなって

から、不規則にスタンプが送られてくる

ようになりました。泣いている女の子の

スタンプです。それも繰り返し送られて

きます。

「何かあったの?」とLINEしても返信が

ない。その内に、その女の子のスタンプ

が取り消されている。しばらくしてから

「なんでもない。だいじょうぶよよよ」

と返信が来た。

「よ」が多いよと LINEすると、しばらく

してから、記号、数字、ひらがなや漢字

が混ざった、文章になってない LINEが返

ってきました。

「どうかした?」と送ると、同じように

意味の分からないものが返ってくる。

 

 

長女と面会に行くと、こちらを見る目が

うつろで生気がありません。

内線電話が繋がると妻は、

「あまり目が見えない。それと耳がほと

んど聞こえなくなってるの」

 

でもこれは、まだ始まりでした。