yururi-furu’s blog

ゆるりと続けるフルコミ営業

願いの代わりに(本日妻が亡くなりました㉛)

 

5月は、妻にとって嬉しい月でした。

1日は結婚記念日、第 2日曜日は母の

日、24日は妻の誕生日。

去年はもう入院していたので、退院した

らその分のプレゼントとケーキを買って

もらうと言っていました。

「お金がかかるから覚悟しておいて」と

笑っていた。

 

でもそうはならなかった。プレゼントも

無く、ケーキはお仏壇にお供えするもの

になってしまいました。

母の日のカーネーションも買わない。代

わりに長女が、ドライフラワーのリース

を用意してくれました。


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長女が用意した母の日のリース

 

この病気が治らないと無菌室から出られ

ないことは分かっていても、感情が抑え

られず、思っていることを吐き出して泣

きじゃくる妻。

 

「病気がちゃんと治らないと、別な病気

になってしまうよ」と僕が言うと、

「もう無理なの。別な病気になってもい

いからここから出る!」

「かえって入院が長くなるよ。もう少し

だけ頑張ろう、ねっ、もう少しだけ」

 

この時の妻の気持ちは痛いほど分かる。

担当の H先生に「移植がうまくいかない

ことは考えなくてもいい」と言われてい

たのに、もう白血球が増え始めなければ

いけない時期なのに、まったく白血球が

増えてこない。それどころか体調がどん

どん悪くなっていく。手が震え、目で見

たものや耳で聞いたことの意味も分から

ない。そして記憶する力が落ちている。

いま話したことを、すぐ忘れてしまう。

妻は、自分がどんどん変わっていくこと

に絶望感を覚え、自分がなんの役にも立

たない人間になっていくと焦り、生きる

力を失ってきていました。

 

妻の大きな泣き声を聞いた看護師さんが

駆けつけて、妻の体をさすりながら言葉

をかけ落ち着かせてくれた。その後には

メンタルケアのお医者さん達も来て、サ

ポートしてくれました。

 

 

落ち着いた妻が僕に

「私の抜けた髪の毛はもう戻らないけど

いいんだ。諦めたんだ」

「時間はかかるけど戻るよ」と僕。

 

「だって約束してくれたんだ。髪の毛は

戻らないけれど、病気は治してくれるっ

て。神様みたいな人が夜中に来たんだ」