2023年11月23日の祝日、宇都宮
の孫に会いに行く途中、以前行った群馬
県桐生の山にある「宝徳寺」さんに寄り
ました。
前回は 5月の新緑でしたが、今は秋で、
この山のお寺が最も華やかに感じられる
「床紅葉」の季節です。妻と行くことは
できませんでしたが、すっかりこのお寺
のファンになってしまいました。
宝徳寺さんの床紅葉など
この時、パイプ椅子に座って妻の手を握
りしめていた僕の顔の真横には、ベッド
サイドモニターがありました。これは心
拍数や血圧、血中酸素飽和度なんかを測
る機械です。血圧の数値は覚えていませ
んが、心拍数を表す波形が小さかったこ
とと、血中酸素飽和度(SpO2)の数値が
異常だったのを覚えています。
以前僕が、新型コロナウイルスに罹患し
てホテル療養したときに、一日に何度も
ホテルに待機している看護師さんから連
絡があり、血中酸素飽和度の数値を確認
されました。これは通常 100ぐらい無
いといけない。96を下回ると危険な状
態とのこと。僕は 92~93のことが多
かったため、その場で足踏み運動をさせ
られ無理に数値を上げさせられました。
96を下回ると危険だというのに、妻の
数値は、たったの 43でした。これはも
う不可能な数値です。
ベッドサイドモニター
心臓マッサージを止める決断をするとき
は、長女の顔を見て確認を取りました。
言葉を交わさないで、お互いに頷くだけ
の確認。二人とも目に涙を溜めて黙って
頷き、僕が H先生に伝えた。
いつか何かの医療ドラマで見たようなシ
ーン。このあとそんなに時間が経たない
で、僕の顔の横にあるベッドサイドモニ
ターの心拍数を示す波形が小さくなり、
ピーっという音と共に波形が無くなって
一本の線になる。これは心臓が止まるこ
と。それを自分で見なければいけない。
覚悟をしようと思っている間もなく、そ
れはすぐに訪れた。ほんの 1分ぐらいの
間に、です。
心拍数を表す波形が線になった。
妻の人生が終わりました。
長男、次男が病院に駆けつけました。妻
のお兄さん、妻の弟さん夫婦と妻の両親
が続けて病室に入ってきました。
妻の名前を呼ぶ声と嗚咽だけが響く小さ
な病室。
この日は次男の誕生日。23年前、生ま
れたばかりの次男を愛おしそうに見つめ
ていた妻。
その妻の顔に白い布がかけられました。